おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

【各話読み切り】ざんねんマンと行く~疲れた現代人への応援歌

【ざんねんマンと行く】 第33話・怒りか幸せか(下)

~(上)はこちらです~ 「さあ、今日はまず物価問題から。最近の円安進行で輸入価格の上昇が止まりません。小麦などの食料からガソリンなどの燃料まで、いずれも値上がりで家計を圧迫しています」 よどみない口調でキャスターの細川が社会情勢を簡潔に説明…

【ざんねんマンと行く】 第33話・怒りか幸せか(上)

プルルル 週末。夜9時。見知らぬ番号から着信が入った。まったく、ひと心地つこうかっていうときに、どなたですか。 人助けのヒーローことざんねんマン、口にしかけた缶ビールをちゃぶ台に戻すと、スマホに耳を当てた。はい、どなたですか。 「夜分にすみま…

【ざんねんマンと行く】 第33話・「マジで彼女がほしい」のに恥ずかしくって動けない男子の顛末(下)

~(上)はこちらです~ 彼女がほしくてたまらない青年は、ざんねんマンの適当とも投げやりとも思える提案を胸に、家路についた。 おじさんの言うとおり、たしかに今のままじゃ、彼女ゲットは難しそうだ。同世代の子を前にしたら、ドギマギして何もできない…

【ざんねんマンと行く】 第33話・「マジで彼女がほしい」のに恥ずかしくって動けない男子の顛末(上)

コンコン 週末の午後。アパートの玄関をたたく音があった。さてさて、今日はどんなお客さんですかな。 人助けのヒーローこと、ざんねんマン。昼飯のカップラーメンをズズーと勢いよくすすり上げると、音の方へ向かった。 「突然、すいません、僕、ご相談があ…

【ざんねんマンと行く】 ~第32話・「ニーター」なる新しい暮らしのスタイルが出現~

「息子が働かんのです」 メールに目を通すと、つぶやいた。「手ごわい案件かもしれないな」 人助けのヒーローこと、ざんねんマンの元に届いたのは、70代男性からのメール。40代になる独身の息子が会社を辞め、そのまま自宅に引きこもり状態になっている…

【ざんねんマンと行く】 ~第32話・おっぴろげマンとの激闘(下)~

~(中)はこちらです~ ひとの考えていることを読み取り、そのまま声にしてしまう迷惑怪人・おっぴろげマン。首相官邸に現れ、やりたい放題の大暴れをしていたが、SOSで駆け付けたざんねんマンの逆襲を受けてだんだんと勢いを失いかけていた。 感情の激流に…

【ざんねんマンと行く】 ~第32話・おっぴろげマンとの激闘(中)~

~(上)はこちらになります(3分で読めます)~ 人の心の声を読み抜き、言葉にしてしまう迷惑怪人・おっぴろげマン。総理官邸まで荒らしにきた迷惑男を退治せんべく、人助けのヒーローこと「ざんねんマン」が立ち向かった。 ・・・ とはいっても、必殺技が…

【ざんねんマンと行く】 ~第32話・おっぴろげマンとの激闘(上)~

プルルルル朝からスマホが鳴りやまない。人助けのヒーロー・ざんねんマン、かつて体験したことのない緊急コールの多さに、ただならぬ異変を感じた。何かが、起きている。電話の主はさまざまだった。テレビ局関係者、中堅メーカーの管理職、一般家庭の主婦・…

【ざんねんマンと行く】 第31話・真・terminator

ダダッ・ダッ・ダダッ 聞き覚えのある効果音で目が覚めた。深夜、寝息を立てていた人助けのヒーロー・ざんねんマンは、布団をめくると周囲をじっくり見渡した。 誰か、いる。 六畳一間の隅に、確かな人影をみとめた。先日も真夜中に落ち武者のお化けとやりあ…

【ざんねんマンと行く】 第30話・SNSで孤独をつぶやく少女に面する~

「私はひとり」 短い言葉が、やけに気に掛かった。 国際交流を目的にした、とあるSNS上の投稿だ。一つのメッセージは、続々とアップされる無数の投稿の下に埋もれてゆく。日記、エッセイなど多彩な文体がタイムラインを彩る中、わずか一文で終わる投稿は少な…

【ざんねんマンと行く】 ~第29話・幽霊だって悩みを抱えている~

くるしい・・・ 胸を押さえつけるような感覚に襲われ、思わず目を開けた。 草木も眠る、丑三つ時。人助けのヒーローこと「ざんねんマン」は、頭からかぶっていた布団をちょっとだけめくると、恐る恐る天井を見上げた。 めちゃくちゃ、目が合った。 ボロボロ…

 【ざんねんマンと行く】 ~第28話・〇〇党vs◇◇教の顛末(下)~

予想もしない展開が、ざんねんマンを待ち受けていた。 まず山下氏が口を開いた。「私、今の政党、降ります」 驚くざんねんマンと川上氏に向かって、決然と宣言した。「新党、立ち上げます」 政党の名は、「ざんねん党」。 「あなたの言葉、姿勢、包容力。す…

【ざんねんマンと行く】 ~第28話・〇〇党vs◇◇教の顛末(中)~

孤立無援状態のざんねんマン、淹れたてのコーヒーを一口すすると、“反撃”ののろしをあげた。 さっきからお話伺ってますとねえ、お2人とも似すぎなんですよ。何ですか、綱領だとか、教理だとか。要は家訓みたいなもんでしょう?名前が違うだけなんじゃないで…

【ざんねんマンと行く】 ~第28話・〇〇党vs◇◇教の顛末(上)~

世の中をよくしたい。 その一点で思いは同じなのに、アプローチが違うだけでひずみが生まれ、いがみ合う。そんなことが、我々の生きる現代の世でも、しばしば見られます。何とも残念なことです。少し後ろに下がって、広く物事をみつめることはできないもので…

【ざんねんマンと行く】 ~第27話・カラオケで注目を浴びたい管理職の心境(中)~

カラオケがうまくなって、会社の若い子たちにチヤホヤされたい! 誰にも明かせなかった願望をざんねんマンに聞いてもらったアラフィフの男・弘(ひろし)。居酒屋でひとしきり話をした後、人助けのヒーローに手引きされるように店を出た。 ややできあがった…

【ざんねんマンと行く】 ~第28話・カラオケで注目を浴びたい管理職の心境(上)~

これまで、そこそこ納得いく人生を送ってきた。 そこそこの大学を出て、それなりに名の知られた会社に入った。上司、仲間にも恵まれ、ある程度納得いく仕事とキャリアを積むことができた。今は管理職として、相応の地位と責任を与えられている。部下からもそ…

【ざんねんマンと行く】第27話・宇宙にあこがれる少年~

「息子に、せがまれまして」 便せんにしたためられた相談内容に、人助けのヒーローはちょっと渋い顔をした。おいらはなんでも屋じゃないんだがなあ。 手紙の主は、東京都内に暮らす会社員男性(50歳)。最近、日本人実業家が宇宙旅行を楽しんだというニュ…

【ざんねんマンと行く】 ~第26話・ほじくり怪獣・ホジクロンとの闘い(下)~

~(上)はこちら~ 触れられたくない過去や秘密を白日の下にさらけ出す、ほじくり怪獣・ホジクロン。もはや抗う術なしかと世間が諦めかけたころ、意を決したざんねんマンが、決死の形相で強敵との間合いをジリジリと詰めていった。 こやつのやりたい放題に…

【ざんねんマンと行く】 ~第26話・ほじくり怪獣・ホジクロンとの闘い(上)~

ババババ・・・ 朝から上空が騒がしい。アパートの窓を開けると、複数機のヘリが一直線にどこかへ向かっていくのが見えた。 マスコミか。何かが起きているみたいだな。 人助けのヒーロー・ざんねんマン、不穏な空気を感じ取るや、手作りマントを羽織り、ヨイ…

【ざんねんマンと行く】 ~第25話・「神さま」も大変じゃて~

澄み切った初夏の青空は、その下を歩いているだけで心洗われるようだ。 人助けのヒーローこと、ざんねんマン。公園で昼下がりの散歩を楽しんでいると、1本の大木を前に体が急に重くなった気がした。 「うー、む・・」 なんだか、沈んだ声が聞こえた気がする…

【ざんねんマンと行く】 ~第24話・誰の役にも立たない人間はいるのか~

「僕なんか、いてもいなくても同じだい」 高校2年生の哲郎は天井を仰いだ。 勉強はからっきし。運動神経なんてさらさら。おかげに髭が濃くて、おじさんみたいな顔をしている。それに加えて気弱なところがあるから、友達なんかろくにできない。学校でも、自…

【ざんねんマンと行く】~第23話・ぜいたく反対を叫ぶ男の顛末~

ピンポーン 週末の昼下がり。午睡をむさぼっていた、人助けのヒーローこと「ざんねんマン」のアパートに、来客があった。 モニター越しに映ったのは初老の男性。肩に何やら、たすきを掛けている。「またまた、変なおいさんが来ちゃったよ」。ボヤきながらド…

【ざんねんマンと行く】 ~第22話・押しの弱さもときには魅力になるかもしれない~

「お待たせしました、ただいまからチケットを拝見します」 都内のとあるシネマコンプレックス。SFの最新作品が封切りとあり、映画館は若者を中心に大勢の人でごった返していた。スタッフが声を張り上げると、カップルや家族連れが流れるようにゲートへと吸い…

【ざんねんマンと行く】 ~第21話・一度は「主役」になりたいと妄想膨らませる男~

僕だって、主役になりたい! 大学生の航(わたる)は、ふつふつと沸き起こる思いをどうにも抑えられなかった。 幼いころから、教育熱心な親の下で学習塾に通い詰めてきた。だが、生来の勉強嫌いで、成績は一向に伸びず。受験で挫折を繰り返し、今は滑り止め…

【ざんねんマンと行く】 ~第20話・殿様の悲哀(下)~

~(上)はこちらです~ 【ざんねんマンと行く】 ~第22話・殿様の悲哀(上)~ - おじさん少年の記 「そうです。と答えられれば、よいのですが」 ざんねんマンの一言には、どこか哀しい響きがこもっていた。 たしかに、私の暮らす21世紀の日本では、衣…

【ざんねんマンと行く】 ~第20話・殿様の悲哀(上)~

余(よ)は、生まれる時代を間違うた。 ときは17世紀。寒風吹きすさぶ、越前国・福井。ここで長らく殿様を務める藩主・松平忠直(ただなお)公の気持ちは、深く沈んでいた。 江戸幕府の開祖・徳川家康公の孫として生まれ、何不自由ない幼少期を送った。恵…

【ざんねんマンと行く】 ~第19話・亡き人を偲ぶ~

こらえようと思っても、こぼれる涙を止めることができない。 公私でお世話になった、人生の先輩が、世を去った。 急性期の病におかされていたらしい。人づてに調子が悪いとは聞いていたが、まさかこれほど早く、あっけなく逝ってしまうとは。 玄関前のポスト…

【ざんねんマンと行く】 ~第18話・数学者、己の才に限界を感じる~

上には上がいるもんだ。 誰もが憧れるT大学に合格した一郎。得意の数学を武器に、中学、高校と学年トップを独走してきた。が、さすがに国中の俊秀が集まるT大学では自力の差がにじみ出てくる。院までは進んだものの、天賦の才が光る仲間たちに囲まれていると…

【ざんねんマンと行く】 ~第17話・なんという暮らしの中にもしあわせの種はある~

人助けのヒーローこと「ざんねんマン」も、お呼びが掛からなければすることがない。寂しいようだが、それだけ世間が平和ということで、ありがたくもある。 週末の午後。つかの間の平穏をかみしめんと、ざんねんマンは一人、気楽な電車旅に出た。 ガラガラの…

【ざんねんマンと行く】 ~第16話・おっさんだって悩みを抱えている~

ピンポーン 玄関のモニターをのぞくと、一人のおっさんが立っていた。 都内某所。悩みを抱えたこの男は、どうやって調べたか、人助けのヒーロー「ざんねんマン」の暮らすアパートまでやってきたのであった。 今日も長い一日になるのかな。身震いしながら、ざ…