おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【ざんねんマンと行く】 ~第39話・口下手な居酒屋大将のささやかなる挑戦(中)~

そうだ、今日はこの大将を助けないといけないんだった。悦楽の世界からふと我に返ったざんねんマン、無言でうつむく大将の頭頂部を眺めながら、策を練った。まず、話をしようにも会話が続かない。どうしたもんか。こうなったら、独り言作戦でいくか。ざんね…

【短編】無限地下ホテル・続

">地の底に向かってどこまでも円柱状の空洞が続き、その側面いっぱいに、客室のドアが段層状に並んでいた。 "> 無限の闇へとつながる不思議なホテルは、私の興味関心をそそるのに十分だった。怖がりな性分にもかかわらず、私はもっと下を目指していった。 闇…

【短編】天国地獄

さあ、くるならこい。閻魔だってサタンだって、誰でも相手にしてやろうじゃねえか。 黄泉の国にやってきたばかりの人間たちがつくる列の中に、一人険しい形相を見せる男がいた。 地球で息をしていたころ。その男は天下を支配し、民から富という富をむしり続…

【ざんねんマンと行く】 ~第45話・究極の自己中と「三方よし」(下)~

「究極の自己チュー人間」とうたい、自嘲気味に乾いた笑いをあげる三好に、傍らでへべれけ気味のざんねんマンが口を開いた。 三好さん、気取ったこと言ってますけどね、ぜんぜん「究極」じゃないですよ。まだまだ修行が足らんようですなあ。 予想もしない言…

【ざんねんマンと行く】 ~第45話・究極の自己中と「三方よし」(上)~

軽くなった徳利を、未練がましく振ってみた。ああ、残りちょびっとか。 駅前のにぎやかな居酒屋。寂しい懐事情もあり、カウンターでチビチビやっていると、不意に隣から声を掛けられた。「どうですか、一杯」 徳利を傾けてきたのは、黒縁眼鏡が印象的なスー…

【手記】無限地下ホテル

やけに現実感があった。 私は妙な興奮とともに目を覚まし、まだあの空間に身をおいているかのような気分の高まりとともにあった。 地中に向かってどこまでも続いているのであろう、穴を私は見下ろしていた。 きれいにくり抜いたであろう円柱状の空洞に面して…