おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

2023-01-01から1年間の記事一覧

【SF短編】7色の星

宇宙は探検するほど発見がある。自分たちの常識がいとも簡単に覆されるのは、多少ショッキングではあるが、驚きと喜びがはるかに優る。 知れば知るほど、己の視野の狭さに思い至り、頭が垂れる。 ともあれ、こちらの星もまた我々地球人にとっては奇想天外な…

【SF短編】こころめがね

23××年××月××日 快晴 手記を綴りだしてからもう何年になるだろう。人生も折り返し点を過ぎると、何やら自らの足跡を残したくなるようだ。 それにしても、市場にあの商品が登場してから、世の中は一気に変わったと感じる。私の半生も、そしておそらく地球上…

【SF短編】繰り返しの未来

私は遂にタイムマシーンを発明した。 苦節50年、長かった。ああ、気づくともう喜寿だ。 感慨にふけっている暇はない。往生こいてしまう前に、見たいものを見ておくことにしよう。 ふっふ、私が見たいものは、古代の恐竜やら近未来の文明生活やら、ミーハー…

【SF短編】過去なき世界

その惑星の住民は、見た目こそ我々地球人と似ていたが、決定的に異なる特性があった。 過去がなかったのだ。 正確にいえば、彼らは過去への関心が極めて薄かった。その代わり、目の前の「今」に注意力のほぼすべてを注いでいた。未来については、あくまでそ…

【SF短編】未来の天動説

今思えば、100人を乗せた宇宙船「cosmo ship」が初めて彼の地に着陸した瞬間が、地球の我々にとって興奮と期待のピークだったのかもしれない。 西暦28XX年。人類は遂に念願の火星植民化を果たした。地球は温暖化が加速し、南北の氷河が溶け、陸地は狭ま…

【随想】輪郭

名前をまとうと、そこに個性が現れる 個性は輪郭を伴う 輪郭は、自と他を分ける境界線である そこから相互作用が生まれる あるときは発展であり、あるときは対立である 今の世の中は、対立が幅を利かせているようにみえる 本来は名も無い統合体が 己が内の分…

【短編】経済!経済!経済?

首相の串田は鬱々としていた。 「最強の決めゼリフだと思ったのだが・・」 先日の党首討論で繰り出したフレーズは、期待と裏腹に世間の反発を招いた。「経済!経済!経済!って、そらぞらしいわ。庶民の懐事情も分からん人間がえらそうに」 ブレーンたちと練…

経済、経済、経済!

これだけじゃ国民に響かんよ。 この後に 「こづかい、こづかい、こづかい!ご家庭のこづかいもアップを!」 ここまで呼びかけたら、世の中のサラリーマン票をもろともゲッチューできたのにぃ〜

大切なもの

こないだ、講演会を聞いて心に響いた言葉があるのでここに書き留める。 「大切なのは最終学歴ではなく、最新学習歴だ」 これは叱咤であり、励ましでもあると感じる。 過去にこだわることなく、今に向き続けよ。 そのとおりだ。 この姿勢は、できることなら自…

戦争に思う

生まれたからには友達がほしい けんかはしたくない そもそも、ぼくはつよくない 敵にもならないよ ただ一緒に空気を吸って、見上げよう

I think therefore....

“I think, therefore I am” Great. But…..is that so? I’m sorry sir, but things don’t seem to be so simple. Yes I am thinking right now, but it doesn’t necessarily mean “I” exist. You take the existence of “I” for granted. But “I” is not some…

SPEECH TITLE: Are we connected or isolated?

In the age of smartphone, we are seemingly getting closer and closer with one another. We can talk to anyone on the earth , with the help of applications, like Line , Zoom or Skype. It seems that we have overcome the limit of geographical …

Speech Title: How to survive the generative AI age

Today I would like to share ideas with you about generative AI. Like the ChatGPT. Yes, ChatGPT is really really useful. It helps us write reports,summarize documents , and even translate them into any language we want. Oh, what a great par…

折々に老父母の暮らす実家に帰るようにしている 親父はもう80前だ 昔のいかめしい父親とは違う 動きはのろく、なぜかやさしい 両親とも日頃はろくに外にも出ず 食べてはよこい、風呂に入ってはよこうている ほとんどあの世に片足突っ込んでいる それで何が…

【短編】再起

吉崎主水(もんど)は誰もが畏れ崇める剣士であった。 西国の大藩の剣術指南役。色褪せた木刀一本のみを携え、休むことを知らず藩士たちとの稽古に明け暮れる様は、さながら武者魂の体現者であった。 恵まれた体躯。瞬間の隙を見抜く洞察力。武者の誰もが切…

Essay: ME

What is me? My appearance? Then, just close your eyes. Im still here. I am not only the appearance. My voice? The way I talk? Then , just cover your ears. Im still here. What makes me doesnt necessarily depend on how I look, talk, everythi…

【随想】個と全

午後の柔らかな陽射しに誘われたかのように、色褪せた一枚の葉が枝の元を離れた。 初めて体験する己の自由を喜ぶかのように、無限に広がる空間をヒラヒラヒラと舞った。 やがて湿り気を帯びた大地に触れ、永遠に動かぬものとなった。 ついさきほどまでは、一…

寅造と落ち葉

暗闇の中に、童子の笑い声が響いた。 自分の幼少期を思い出すようで、こころが少しばかり甘酸っぱさでにじんだ。 あともう少しで米寿を迎えるところだった寅造は、猛暑にやられたか、居間でばったり倒れた。いっときは意識を失った。たまたま里帰りしていた…

【ざんねんマンと行く】 ~第44話・日常に埋もれゆく性(さが)からの脱皮(上)~

ブルルルル枕元でスマホのバイブ音が響いた。日曜の朝なんだけど、今日も今日とて早いこってすなあ。人助けのヒーロー・ざんねんマン。活動が知られるにつれ、来客・電話・各種勧誘のアプローチも増えてきた。布団でぬくぬくと過ごす時間が短くなるのはちょ…

【創作】造物、被造物

東の島で生まれ育った男にとって、はるか西の大陸からやってきた女の言うことは理解に苦しんだ。 「造物主は、いらっしゃるんです」 我々の理解を超えた世界にたたずむ何者かが、目に見える限りのあらゆるものを産みだしたのだという。 試みに考えてみよ、例…

【短編】選択

振り返ると挫折ばかりの人生だった。 進学では3つほど選択肢があったが、親のいうがままに補欠合格した進学校を選んだ結果、予想に違わず落ちこぼれとなった。もとより自信のある人間ではなかったが、輪をかけて自己不信、自己否定の塊となり、卒業後は同級…

語学学習と営業メール

語学が好きで、英語と中国語を個人的に勉強している。 学生時代に英検準一級を取得したものの、一級の壁は高く、20年ほど受験を見送っていた。 サラリーマンとなり学習意欲も時間も溶けていく中でなぜか再びやる気を持ちおこし、40手前で英検一級に挑戦…

【小説】無限地下ホテル・3

客室の壁が南国の浜辺を映し出すB1360フロアを後にすると、私は再びエレベーターに乗り込んだ。 下降するほど、奴らと相まみえる可能性が高まる。なにしろ奴らは私とは反対に無限の地下層から上がってきているからだ。 これ以上降りなければ、私は気の済…

【短編】舗装

【短編】舗装 編集 アスファルトの道は、住宅地の中心部を走り、通学する児童から自転車の高校生、勤め人の車などでいつも雑としていた。 日々、朝夕、さまざまな光景が繰り広げられた。不機嫌な表情でハンドルを握る会社員が通り過ぎたかと思えば、ジャンケ…

【ざんねんマンと行く】 口下手な居酒屋大将のささやかなる挑戦

日はとっぷり暮れたが、玄関の暖簾(のれん)が揺れる気配はまだない。駅前の小さな居酒屋。切り盛りする50代の勝(まさる)は、テレビの野球中継を見るともなく眺め、「だめだコリャ」と苦笑いした。会社を早期退職し、夢膨らませて始めた自分の城。若い…

【ざんねんマンと行く】 第44話・純粋無垢な少年少女にこそ見えるものがある

「ともだちが、しにそうなんです」 たどたどしい平仮名に、助けを求める者の切なる気持ちがにじんでいた。 人助けのヒーローこと、ざんねんマンの自宅に届いた一通のハガキ。差出人の住所は鹿児島県指宿市とあった。文字を覚えたばかりの子供だろうか。とに…

【ざんねんマンと行く】 第43話・幽霊界の原点回帰

う~ら~め~し~や~ 草木も眠る丑三つ時(午前2時)。布団をかぶっていびきをかいている耳元で、薄気味悪いかすれ声が響いた。 背筋に嫌な汗がにじむ。人助けのヒーロー・ざんねんマン、実はかなりの怖がりだ。頼む、聞き間違いであってくれーと願いなが…

【ざんねんマンと行く】 第42話・人知れず積む善行

「さーいよいよ長丁場の始まりです!感動の瞬間を、捉えられるか?!」玄関前で、リポーターがやけに高いトーンで叫んだ。各テレビ局が折々に手掛ける、24時間密着シリーズ。病院、ポリス、コンビニ・・と、あらゆる対象をネタにし尽くし、もはや残るトピ…

【ざんねんマンと行く】第41話・矛と盾

この年になって、ささいなことで頭を悩ませるとは。まったく、ただの頭でっかちの、でくの坊か。俺は。 中空を見上げ、自嘲気味に「だめだこりゃ」とつぶやいた。 黒縁眼鏡にスーツをピシりと着こなした姿は、まさに学者然としている。名の知られた大学で論…

【歩き旅と思索】 49・デジャビュ

地点から地点へと歩いてつなぐ旅を20年している。 40代となり、体力は確実に衰え、1日に歩ける距離も短くなってきた。 ただ山あいの集落を歩き、海沿いのひなびた田舎道をたどり、ときおり大都市の雑踏を抜ける。その繰り返しにすぎない。 それなのに、…