おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

寅造と落ち葉

暗闇の中に、童子の笑い声が響いた。 自分の幼少期を思い出すようで、こころが少しばかり甘酸っぱさでにじんだ。 あともう少しで米寿を迎えるところだった寅造は、猛暑にやられたか、居間でばったり倒れた。いっときは意識を失った。たまたま里帰りしていた…

【ざんねんマンと行く】 ~第44話・日常に埋もれゆく性(さが)からの脱皮(上)~

ブルルルル枕元でスマホのバイブ音が響いた。日曜の朝なんだけど、今日も今日とて早いこってすなあ。人助けのヒーロー・ざんねんマン。活動が知られるにつれ、来客・電話・各種勧誘のアプローチも増えてきた。布団でぬくぬくと過ごす時間が短くなるのはちょ…

【創作】造物、被造物

東の島で生まれ育った男にとって、はるか西の大陸からやってきた女の言うことは理解に苦しんだ。 「造物主は、いらっしゃるんです」 我々の理解を超えた世界にたたずむ何者かが、目に見える限りのあらゆるものを産みだしたのだという。 試みに考えてみよ、例…