おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【短編】舗装

アスファルトの道は、住宅地の中心部を走り、通学する児童から自転車の高校生、勤め人の車などでいつも雑としていた。 日々、朝夕、さまざまな光景が繰り広げられた。不機嫌な表情でハンドルを握る会社員が通り過ぎたかと思えば、ジャンケンで負けたのであろ…

【短編】気づきと無

修行の世界に身を転じた男がいた。世事に疲れ、人間関係に疲れ、自信を失い、すっかり生きる力を失いかけていた。 呼吸をするのも苦しいほどに追い詰められ、自らを追い詰め、もはや何をしてよいか分からない。その道の先人たちが頼ったとされる書物に目を通…

【ざんねんマンと行く】 ~第54話・なんでも悲観的に考えてしまう青年(下)~

自らのダメ具合をひけらかし、自嘲気味の青年に、ざんねんマンは一瞬たじろいだ。が、返しもなかなかすごかった。 まあその、すごいもんですなあ。そこまでダメなところを見抜けるとは。もうこうなったら、徹底的にダメダメ具合を突き詰めて探してみたらいい…

【ざんねんマンと行く】 ~第54話・なんでも悲観的に考えてしまう青年(上)~

「ああ、僕はだめだ」 哲也(てつや)はため息をついた。頑張って書いた大学のレポートの評価が、合格ギリギリラインの「可」だった。10日間、図書館に通い詰めて仕上げたのに。僕は、本当に才能がないなあ。 まあ、振り返れば「良」も幾つかは取ってきた…

【ざんねんマンと行く】 おっさんだって悩みを抱えている

ピンポーン 玄関のモニターをのぞくと、一人のおっさんが立っていた。 都内某所。悩みを抱えたこの男は、どうやって調べたか、人助けのヒーロー「ざんねんマン」の暮らすアパートまでやってきたのであった。 今日も長い一日になるのかな。身震いしながら、ざ…