おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

【歩き旅と思索】 ~18・野宿で冷や汗をかく~

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日がな歩いて、夕方になったらテントを張る。単純な旅だが、これでも結構ヒヤリとする機会に遭遇した。

 

忘れもしない。佐賀県太良町という、有明湾をのぞむ町を通りかかったときのことだ。

 

のどかな内海を望むことができる公園があり、そこにそびえる三層構造のお城のような建物に上ってみた。

 

天守閣(と勝手に呼ばせていただく)に至ると、実に景色がいい。ひとけも全くない。「今晩はここで泊まらせていただこう」と、遠慮なくテントを張らせていただいた(もう20年以上前のことなので、ご容赦を。今はキャンプ場で泊まっております)。

 

夏だったが、そこまで暑苦しくもなかった。快適だ。そのまま、夜が更けるものと思っていた。

 

と、やや離れた浜辺からキャーとかワーとか元気な声が聞こえてきた。ああ、同世代の若い人たちだろうなあ、夏の夜の花火でも楽しんでいるんだろう。いいなあ。

 

その声が、だんだんと近づいてきた。若者たちの声も、かなり威勢がいい。酒もかなり回っているようだ。ちょっと身の危険を感じるような、少しヤンキーテーストが漂う声色で、私は少し背中に汗がしたたるのを感じた。

 

まずかった。ここはお城だった。やんちゃな兄ちゃんたちが、上ってこないはずがない。天守閣(3階)まで征服しにくるだろうことは想像に難くない。ああ、やばい。酔っ払ったヤンキーには、何されるか分からないぞ。

 

覚悟を決めた。テントの中で正座をした。財布を開いた。盛っている札束を取り出した。といっても1万円札と千円札が数枚。兄ちゃんたちがテントを開けてきたら、せびられる前に差し出すつもりだった。

 

2階まできた。いよいよか。夜襲を喰らったときの殿様の気持ちが、少し分かったような気がした。思わず、尻の穴に力が入った。

 

意外なことが起きた。兄ちゃんたちは、なんと2階で満足したのか、そのまま降りていった。

 

ああ、助かった。お金、巻き上げられなくてすんだ。けがも、しなかった。

 

心底、ほっとした。もう、城ではテント張らないと決めた。

 

こんな、ちょっと危ない経験を、これまでに幾つか体験してきた。今でこそ笑える話だが、その当時は心底ビクビクしたものだ。

 

これからもこうした体験をするかもしれない。が、特に人間に対しては、潔く有り金全部を差し出して命を守ろうと思う次第である。

 

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