おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

【歩き旅と思索】 ~8・怖いもののつづき~

~簡単な自己紹介はこちらになります~

ojisanboy.hatenablog.com

 

歩き旅をしてきた中で出遭った「怖いもの」は、動物以外にもある。

 

幽霊だ。

 

私は霊感というものがある方ではないと思うのだが、明らかに、「いる」と感じる瞬間があった。

 

鹿児島県は桜島を右手に見やり、錦江湾沿いに歩を進めていたときのことだ。

 

迫力とともに壮麗さを感じさせる、美しい山体をたっぷり味わいながら、夕暮れ前に、とある砂利の広場に通りかかった。

 

特に整備された様子もない。私有地ともみえず、陽がもうすぐ沈もうとしていたこともあって、この日はここでテントを張ることにした。

 

この時点で、少し違和感はあった。頭ではなく肌で「俺は招かれざる客だ」との空気を感じた。

 

ただ、もう一日歩いてからだが疲れている。ささっとシートを張ると、ごろりと体を横たえた。

 

それから数時間のことは覚えていない、朝方近くまでぐっすり、眠った。

 

突然、胸を押さえつける者の存在を感じた。まだ夢うつつで、まぶたを空けることができなかった。憎しみのようなものを感じ、私は「やめてくれ」と懇願したくなり、思いまぶたをようやく開けた。

 

テントの中には、何者もいなかった。

 

私は感じた。ここには、いつの時代か分からないが、事情があって望まぬ最期を迎えた方がいらっしゃったのだろう。

 

もちろんこれは私の想像に過ぎないが、体でそう、感じた。私は夜明け前にもかかわらず、姿の見えぬ霊にせきたてられるようにテントを撤収し、桜島への旅路を再開した。

 

人間の目に見えるものばかりが存在するもののすべてではない、そう感じさせられる一日だった。