~簡単な自己紹介はこちらです~
同じ人間を見るのでも、子供と大人とでは捉え方が全く違う。
純粋な目と、世間を知った上で見るいぶかし気な目。
見つめられるほうは、たまらん。
それを、歩き旅の途上で如実に感じた。
鉄路はほとんど道路にとって代わられていたが、一部、ささやかだが駅舎が残されていた。
そこを通り掛ったのが夕暮れ時。初夏だったか。近くにキャンプ場があるわけでもなく、えいやとテントを張ることにした。
黄色く目立つ三角錐をこしらえてから間もなく、どこからかちびっ子たちの声が聞こえてきた。
「うわ、すげえ、テントや」
田舎のちびっ子たちは純朴だ。旅人の私を警戒することもなく、張ったばかりのテントに興味津々の眼差しを向ける。
「すごい!おじちゃん、中に入れて」
い、いいけど、何もないよ。
私の返事などろくに聞いていない。ちびっ子たちは、そう、3,4人ぐらいいただろうか。一気に入ってきた。もう、室内はいっぱいだ。瞳はそう、
キラキラキラ☆彡
といった感じか。
ワーワーキャーキャー
ちびっ子たち、はしゃいでいる。その声を聞いて、私も楽しく嬉しくなった。
と、何気なく路上側に目をやると、鋭い視線が私を刺した。
地元の大人たちだ。ちびっ子のお母さんだろうか。
「ヤバい、変なおっさんがいる」
険しい表情と腕を組むお姿が、心の内を物語っていた。明らかに警戒していらっしゃる。そりゃそうだ。申し訳ない。ただ、私は決して怪しい者じゃない。ちびっ子たちも、私から誘ったわけじゃない。誤解されてはたまらない。
わざと、お母さん方に聞こえるように声を張り上げた。
まー僕たち、楽しいよねえ。でもねえおじさん、みんなのお父さんお母さんが心配してると思うから、テント出たほうがいいかと思うよ。お外で遊びよ。
おじさん、歩いて旅をしてるんだ。ここなら地元の人にも迷惑かけないでいいかなと思ってね、テント張ったんだ。
すべて、鋭い視線に向けた釈明だ。ちびっ子たちは全く耳を貸さない。
ただ、ひとしきり室内でゴロゴロした後、再びお外へ出ていった。「おいちゃん、今日ずっとここにおるん?」
お嬢ちゃんだったかに尋ねられた。うん、今日はおいちゃん、夜もここにおるよ。
お嬢ちゃんは、不思議な旅のおっさんがしばらくはまだそこにいてくれることを嬉しく思ったのか、ニコッとした。
それからしばらくして、ちびっ子たちもお母さんたちも、日が沈む前の山陰に溶けていった。
子どもの純な好奇の目は、それを真に受けるだけで元気を分けてもらえる。一方、警戒に満ちた大人の鋭い視線は、どこか心をヒンヤリとさせる。
どうせなら前者の目線を持ったまま生きていきたい。ただ、後者の目線も養わなければ、世の中をしたたかに生きてはいけない。どちらの目も大切で必要なものなのだろう。
とはいえ、なんだか世知辛いなあ。
人の成長について考えさせられる一幕だった。
~お読みくださり、ありがとうございました~