~簡単な自己紹介はこちらになります~
九州は大分県南部の海岸線沿いに歩いていたときのことだ。
夏も終わりかけのやや涼まってきたころだったか、日がな青い水面を眺めながら歩くのは実に爽快だった。
と、途中から上空を舞う一羽の鳥が気になった。トンビだろうか。歩く私の真上で、ゆっくりと円を描いている。その動きがなんともゆったりとしていて、雄々しさに見惚れた。つかず離れず、私のはるか頭上で滑空を続けていた。
ここで、はたと気づいた。どうもこの鳥は、私を「餌」だととらえているのではないか。私がもし仮にここで倒れたりしたら、それきたとばかりにクチバシでつつきにくるのではないか。
なんということはない、私はあの鳥にとってただのつまみに過ぎないのだ。
私たち人間は、この地球上で一番偉い生き物だと考えているが、その実、同じように考えている生き物はどこにもいない。頭上の鳥だって、アリンコだって、私たちのことはなんとも思っていない。人間など、この地球の大きな空間の中では、たいしたことのない存在なのだろう。
そう考えると、私という存在が実に軽く感じられ、思わず笑い出したくなった。私たち人間は、あまり堅苦しく考えることなく、ひょうひょうと生を生きていけばいいのだろう。
日がな一日歩く中、頭上のトンビから大切な視点を教わった。