おじさん少年の記

いつまでも少年ではない。老いもしない。

【随想】ママさん

コロナの少し前から折々に通わせてもらっているスナックがある。

 
一人で切り盛りするママさんはかなりのご高齢だが、気配りがきいて、とても楽しいお店だ。
 
そのママさんから昨晩、電話があった。
 
「お店、閉めることにしたのよ」
 
寄る年波には勝てない。そうママさんはつぶやいた。
 
「◎◎ちゃん(私のあだ名)、今までありがとうね」
 
5年も10年も通い詰めている客ではないのに、このひと言を伝えるために、わざわざ私のようなしがないサラリーマンにまでお電話を一本入れてくださったのか。
 
最後まで気配りを忘れないママさんに、胸がぐっときた。
 
もうお店の入っているビルが改装工事に入ってしまい、「最後の来店」はかなわないという。
 
なんとも急な別れになってしまった。
 
本当に楽しいお店だった。思い出をたくさんいただいた。気さくなお客さんたちとも出逢うことができ、また、私も会社の仲間たちをここにお連れした。彼らの一部は、私と同じようにこの店のファンになった。
 
出逢いがあれば別れがあるのは頭では理解している。だが、実際に訪れる別れは実に突然で、こころの整理がつかず、さびしいものだ。
 
ママさんに感謝、感謝、感謝。
 
~お読みくださり、ありがとうございました~