疲れたサラリーマンに、古の和歌が響く。
~簡単な自己紹介~
万葉の時代の人々は、物を物と捉えるだけでなく、どこかこころを持ち誰かを偲ばせる印として大切にしていた。
物にも魂が宿る、とみていた。感じていた。その心のおおらかさ、やさしさに感じ入る。現代人よりも、場合によっては心が豊かだったのではないかと思う。
こんな歌がある。
信濃なる
千曲の川の
細石(さざれし)も
君し踏みてば
玉と拾はむ
(巻十四 3400 東歌)
【訳】
信州にある
千曲という川に転がる
小さな小石も
あなたが踏みしめていったものであるなら
私はそれを玉(たから)として拾い(大切にし)ましょう
詠み手は女性か。恋する男性(あるいは愛する夫)がいて、
その人物が訳あって千曲の川を越えてどこかに行ってしまった。
残された女性は、そのわずかな余韻にでも浸ろうと、
千曲の川に目を向けた。
どのあたりをあの人が辿ったのかは分からない。
それでも、どこかに必ず、あの人が踏みしめた石があるはずだ。
あの人の分身だと受け止め、大切にしていきたい。
5・7・5・7・7という実に短い言葉の中に、
現代を生きる人の心をも揺さぶる熱い想いが込められている。
こういう歌に接するたび、仕事の疲れをほんのひとときでも忘れることができる。
万葉集は、現代の疲れたサラリーマン・サラリーウーマンにこそ合う心のバイブルだと考える。
~お読みくださり、ありがとうございました~