おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。創作物語(「ざんねんマンと行く」=各話読み切り)など、書いていきます。からだはおじさん、こころは少年。

【サラリーマン・癒やしの和歌】1・疲れたこころに染み入る

社会人となり、会社組織でかわいがられしごかれ、少々息切れがしてきたころのことだ。入社1年をすぎたころだったか。

 

仕事で回る先の方が体育会系の方で、お話をしているだけでエナジーをもらえていた。

 

知識を誇るような方ではなかったが、あるときふと和歌の話に触れられた。

 

昔の日本人の詠んだ歌には、いいものがたくさんあるという。

 

一つ、作品を教えてくれた。

 

思ひ出づる

時はすべなみ

豊国(とよくに)の

由布山(ゆふやま)雪の

消ぬべく思ほゆ

 

王侯から庶民にいたるまで、あらゆる人々の作品を集めた歌集・万葉集の一首(第10巻・2341番)だ。

 

大意は以下のようなものだ。

 

(慕っているあのひとを)想い出すときは

(何も手に付かず)どうしようもない

豊国(豊後の国。現在の大分県)にある

由布岳にうっすらつもった雪のように

(あっという間にとけて私が)消え入りそうなほど(に切ない)

 

歌は、その方の出身地を舞台にした作品だった。

 

九州の山は、冬に一時的に雪をたたえることはあるものの、温かい気候のためすぐに溶けてしまう。その雪のはかなさに、詠み手は自らの心を見いだしたようだ。

 

自然の光景と、自分のこころが一致した、見事な歌だと私は感じた。

 

その方から、万葉のいくつかの歌を教わった。

 

そこから、自分でも万葉集を購入し、好きな歌を少しずつ発掘していくようになった。

 

自然風景と見事に溶け合った、素晴らしい感動の世界が広がっていることに気づかされた。

 

家持、憶良、虫麻呂。こうした天才歌人たちに加え、詠み人知らずの作品の中にも、現代人のこころを打つ珠玉の作品が実に多いことを知り、驚かされた。

 

仕事に、暮らしに、人間関係に疲れた現代人を、こうした歌のひとつひとつが癒やしてくれるだろうことは疑いないと私は考える。

 

一首ずつ、自分自身のこころに深く響いた作品を紹介していきたい。

 

~お読みくださり、ありがとうございました~