おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

【歩き旅と思索】 32・夜の無沙汰

~簡単な自己紹介はこちらです~

 

テントと寝袋をザックに詰め込み、1日歩けるだけ歩く。

 

日が暮れたらテントを張る。簡単な食事をとり、缶ビールをプシューと空け、ゴロリと横になる。

 

そのあとは、特に何もしない。

 

これが私の20年続けてきた歩き旅のスタイルだ。特に理由やポリシーがあるわけではなく、振り返るとそのように過ごすことが多かった。

 

夜は本当に何もしないので、勿体ないとみられるかもしれない。その通りだろう。

 

ただ、無沙汰の時間も、悪くない。

 

傍らにラジオを置き、聴くでも聴かないでもなく、ただ音声を流す。そして、目を閉じる。ひたすら、疲れを癒す。足腰の筋肉が緊張しているときは、両手でほぐす。翌朝からまた歩けるように、黙々と両手の指に力を入れる。

 

この間、特に何も考えない。ただ、筋肉をほぐすことだけを考える。いや、特に考えているわけでもないか。何か頭にうかんでいることを敢えていうなら「筋肉をほぐす」というぐらいのものだ。

 

昔はスマホもなかったので、闇夜に見るものもなかったし、今もスマホは夜間見ない。というのは電池の減りが激しいと、翌朝の旅に支障がでかねないという実務的な理由がある(民家のほとんどない山間地もよく通りがかるため)。

 

目をつむり、呆ける。

 

ただ、周囲に人気がないときは、ある程度緊張感を保っておかなければいけない。野犬やイノシシが出ることもある(過去に何度かあったし、危ない目も見た)。異音には注意を払う。木々の枝のしなる音に、少しヒヤリとする。

 

うつらうつらを繰り返し、朝を迎える。

 

さて、今日も歩くか。

 

空っぽにした心は、不思議とエネルギーに満ちている。

 

何もしない、長い時間も、歩き旅の面白い一面だと感じる。

 

~お読みくださり、ありがとうございました~