歩き旅を本格的に始める前のことだ。
大学生で、時間がたっぷりあったこともあり、下宿先の前を通る片道1車線の道路をテクテクと歩き出した。
ゴールは決めない。ただひたすら「真っすぐ歩く」ことにしてみた。一体どこにいくんだろう。
20年以上前。スマホもグーグルマップもない。地方から関東に出てきたので、土地勘もない。どこに向かうのか、どこか面白そうなスポットにたどり着くのか、全く見当もつかなかった。
たしか土曜日だったと思う。朝、阿呆のごとく何も考えず歩き出し、ひたすら歩いた。
多摩川を渡った。大きな川だ。気持ちがゆったりしてくるなあ。過ぎるころには交通量もかなり増えていた。住宅もかなりひしめいていたように記憶する。
どんどん進んだ。ちょっと閑静な界隈も通りかかった。そこも抜けた。いくつかのラーメン屋を過ぎた。
やはり、とは思っていたが、都心に近づいた。上を首都高だろうか、高速道路が走っている。やがて鉄道をくぐった。山手線だ。見慣れた雑多な光景。渋谷だ。
少しアップ気味の坂を上る。左手に国連大学?だったかを見たような気がする。ずんずん進む。
そこから先はどう歩いたか、何を見たか、良く覚えていない。ただ、最後に行き着いたところで、「ほお~」と感嘆した。
江戸の風情をたっぷり残したお堀が広がっていた。かつての江戸城跡、現在の皇居だ。
少し巡ると、これまた歴史の古い門が合った。半蔵門だ。田舎上がりの若造ということもあり、じっくり見学した。
西洋では「すべての道はローマに通ず」というが、日本では「江戸城(今の皇居)」に通じていた。
私が歩いたのは地域の「街道」だった。昔から走っていたのだろうと推測する。洋の東西を問わず、道というものはしっかり都までつながっているんだなあ。不思議な感慨を覚えた。
~お読みくださり、ありがとうございました~