おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

【歩き旅と思索】 ~3・こころと裸~

~簡単な自己紹介はこちらになります~

ojisanboy.hatenablog.com

 

歩き旅をしているとき、私は自分の肩書きを忘れるようにしている。自分自身と向き合えるせっかくの機会だからだ。肩書きという重荷を下ろすだけで、体がぐんと軽くなった気がしてくる。こころが丸裸になったような、実に爽快な気持ちがするのだ。

 

この気軽さは、出逢う人にも伝播するのかもしれない。熊本県の天草地方を旅していたときのことだ。片方のひざをいため、やや足をひきづる形で歩いていると、軽トラに乗ったおじさんが話しかけてきた。

 

目的地まで運んでくれるという。親切にお礼を申し上げつつ、「私は歩いてつなぐ旅をしているので大丈夫です」と丁重にお断りした。

 

おじさんは私の歩き方に心配したのか、軽トラを止めて私と一緒に歩き出した。無事にたどり着くのを見届けるためのようだった。申し訳なく思ったが、おじさんのおかげで元気をもらい、なんとか日暮れまでに約3キロ離れたキャンプ場に着くことができた。

 

テントを張り、人心地つくと、おじさんは人生のことについて訥々と語り始めた。

 

生きているといろんな苦労があるだろう。悩むことがあるだろう。解決策が見つからず、一人苦しむこともあるかもしれない。そんなときは、眠りなさい。たっぷり眠ること。少なくとも、体を横たえること。そうすることで、力を養うことができるよ。

 

肩書きのない旅人に接する中で、おじさん自身も肩書きという重しが外れ、裸の自分に戻っていくように感じられた。自分自身が生きていく中で大切にしている人生訓を、初めて会う人間にもかかわらず、真剣に、恥ずかしがることなく伝えてくれた。

 

旅はそれを楽しむ人も、そこで出逢った人も、裸にする。お互いに心の内をさらけ出すことができる。「歩き旅」というシンプルなスタイルには、その魅力を引き出す力があると感じる。

 

~暇つぶしに小話でもいかが(3分読み切り)~

【ざんねんマンと行く】 ~第1話・デビュー~ - おじさん少年の記