おじさん少年の記

疲れた時代に、癒やしの言葉を。からだはおじさん、こころは少年。

2022-02-14から1日間の記事一覧

【ざんねんマンと行く】 ~第10話・乱世を生きる貴人の悩み~

これほどの屈辱を受けようとは。 怒りとも哀しみともつかない、複雑な感情が、貴人の心をかき乱した。 ときは、侍の世になって久しい鎌倉時代末期。武士政権の都合で一度は天皇の座についたものの、再び権力争いに巻き込まれ、やがて座を追われ、果ては幽閉…

【ざんねんマンと行く】 ~第9話・サンタのプレゼント~

時計の針が「12」を回った。12月25日、深夜。世界中の子どもたちが、翌朝枕元に添えられるプレゼントを心待ちに、楽しい夢を見ていることだろう。高校2年生の哲郎は、窓越しに漆黒の夜空を眺めると、幼かったころを思い出した。両の頬が一瞬、緩みか…

【ざんねんマンと行く】 ~第8話・合コンは甘くなかった~

「マジかよ!」スマホに映る短いテキストに、拓也の目は釘付けだ。思わず、手が怒りと悲しみでブルブルと震えている。今日は、生まれて初めて参加する、合コンなのだ。高校時代、一緒に過ごした鉄道研究会の同級生たちと、勇気を出して初めて企画したのだ。…

【ざんねんマンと行く】 ~第7話・怒涛の企業対決~

地球のあらゆるところで、企業が競争を繰り広げております。 国境を越え、大陸をまたぎ、社の利益を挙げんと日々、ビジネスパーソンたちが戦っているのであります。 ですが戦いは、疲れるものであります。 争いから距離を取り、ともに栄える道は、ないもので…

【ざんねんマンと行く】 ~第6話・悟れぬ仏師~

眼前に据えたクスノキの心材を凝視したまま、ピクリとも動かない。いや、動けない。仏師の家系に生まれた若い男は、代々世間から一族に与えられてきた評価と称賛を受け継ぐべく、日々研鑽を重ねている。だが、人々の心を打つ作品を仕上げられたことは、これ…

【ざんねんマンと行く】 ~第5話・雨降って~

いつの世も、けんかってのは絶えません。普段仲のいい友達だって、気が合わなくなるときもありましょう。そんなときは、ふうと息をついて、足元を見直すことが大切かもしれません。「もう、ないわ」空になったプリンのカップを見ると、栄子のひたいに青筋が…

【ざんねんマンと行く】 ~第4話・世界ヒーロー会議で羞恥にまみれる~

人生、何が自分に幸運をもたらすか分かりません。1本遅れて乗った電車で運命の人とめぐり合わせたり、オタクな趣味が、実は取引先の人も同じと分かって商談が進んだり。幸せを求めてガツガツするんじゃなく、かえって気楽に待ってるのもいいかもしれません…

【ざんねんマンと行く】 ~第3話・ほとばしる噺家の宿願~

大人に近づくにつれ、よく言われたもんです。 「個性を出せ」と。 部活でも趣味でも、個性を出し、自分らしさを磨くことで、学校や会社でも認められる存在になれるんだと。でもね、そんな無理して個性って磨かないといけないものなんでしょうか。 胸張って言…

【ざんねんマンと行く】 ~第2話・一生懸命~

私はときどき思うんです。いつの世も、目立つ人が結局得をするような気がするなあって。へっぴり腰で、押しの弱い人間にとっては、競争社会を生き抜くのはきついもんだ。そんな時代だからこそ、声なき声に応えてくれるような、そっと寄り添ってくれる、癒し…

【ざんねんマンと行く】 ~第1話・デビュー~

世の中にはたくさんのスーパーヒーローがいるもんですなあ。やれスー〇ーマン、ウル〇ラマン、バッ〇マン。みんな最強、みんなイケメン。で、モテる。まったく、叶わんですよ。悔しいもんです。私はねぇ、思うんですよ。ちょいと違った主人公がいてもいいん…